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子ども達が「自育」する場所From Earth Kids(フロムアースキッズ)

記事ID:0034756 更新日:2022年3月29日更新 印刷ページ表示

#子育て

少子高齢化の進行に歯止めがかからない。子どもの数の減少は彼らの健全な成長を阻む心配原因となろう。大東市にはこれに応えるためのユニークな試みがある。今回取材したのはその一端を担う「From Earth Kids」と「べすとびじょん」である。前者は子どもがのびのびと育つことを目的とした複合型施設で、後者はFrom Earth Kidsが運営する施設に拠点を置く視覚トレーニング教室である。それらの試みは一般の保育施設とは一線を画している。

住道から歩くこと20分少々、閑静な建物の並びに絵本の1ページが貼られたようなカラフルな建物が目を引く。From Earth Kidsである。ここはもともと学童保育の諸福(もろふく)児童センターであったが、7年前に閉設された。この跡地を活用する民間事業者の公募をきっかけとして保育と療育、自育を兼ねた複合施設From Earth Kidsが誕生した。建物は当時の様子・面影を残しつつ、7年という時を経てリノベーション(改修)を果たした。

外観  

施設の中は外観と同じく鮮やかな色合いが広がっていた。また入口の正面にはクリスマス時期だったので、園児が一生懸命制作したサンタクロースの人形たちが来訪者を愛想よく迎えてくれた。子ども用の可愛らしいテーブルセットに着席し、From Earth Kids創設者の池田さんに話を伺った。池田さんは以前行政関係の仕事に従事されていたが、縁があってこの事業に携わっている。掲げた目標は子どもたちの声を施設に取り戻し、同世代はもちろん大東市の子育てママや老人ホームの入居者といった多世代の交流が促進されることである。新型コロナウイルスの感染拡大により対面の交流機会を設けることは難航しているものの、現在稼働している施設の運営は順調であるとのことであった。

子ども用のテーブルセット

この施設ではモンテッソーリ教育を導入している。これは子ども自身に自分を育てる力が備わっているという考えに基づいた教育法のことである。この教育法は欧米を中心に世界各国で取り入れられており、日本では主に就学前の幼児教育として活用されている。教具についてもイタリアから直接輸入したモンテッソーリの教具を厳選して用いている。

モンテッソーリの教具

From Earth Kidsのポイントは「自育」である。教えられて育つのではなく自然に育むことの大切さを感じた。この教室では子どもたちがのびのびと学び、協調性や社会性に加え、創造性が育まれている。それは従来の画一的な教育にない価値である。何でも手に入る時代だからこそ個々に持っている光るものを磨くことが大切である。「すべては子どもたちの未来のため(池田さん)」、その言葉に胸を打たれた。子どもの自育について語る姿勢は真剣で、こちらにまでその熱意が伝わってきた。

パンフレット 池田さん

From Earth Kidsの施設の一つ、ビジョントレーニングスタジオ「べすとびじょん」についても話を伺った。同教室は日本ビジョントレーニング普及協会の運営する会社であり、2018年にすべての子どもにビジョントレーニングを実施したいとの思いで設立された。また2020年にはビジョントレーニングを児童福祉の現場で療育として特化しておこなう施設が同施設隣に新設された。

取材を受けてくださったのは一般社団法人日本ビジョントレーニング普及協会の理事であり、株式会社べすとびじょん代表取締役の横田さんである。脱サラをして心理カウンセラー・コーチングコーチ・キャリアカウンセラーとなった経歴がある。人との違いが、生まれた以降の成育歴に根源があることに重視し、脳科学メンタルトレーナーとしての勉強中に出会ったのが視覚機能を鍛えるビジョントレーニングだという。視覚トレーニングによって高まる能力は視空間認知能力を始め、集中力や理解力・情報処理能力・感覚統合や身体能力の発達促進など多岐にわたる。

「子どもの発達障がいやつまずきで悩む家庭を1つでも減らしたい(横田さん)」、その一心で子どもたちに向き合う。キャリアカウンセラーの経歴を持つ横田さんは発達障がいを持った方との交流も多かった。渦中の若者に共通してネガティブな思考があり、成功体験を積むことで自己肯定感が高まるということに気づく。そしてこれまでの経験を融合した独自のメソッドを確立し、横田さんはビジョントレーニングのプログラムを推進することになる。

横田さん

ビジョントレーニングは欧米等では80年以上も前から就学前に検査をおこない、就学後の学力向上や困り感を減らすための取り組みとして浸透しているが、日本ではその制度がないため認知度はまだまだ低い。日本では、視覚の専門家「オプトメトリスト」がまだ公的には認められていない。べすとびじょんでは独自のメソッドとしての保護者や教員、一般の方向けのトレーナー養成をおこなっており、現在では初級トレーナーの数は全国で300名を超え、現場でプロとして活躍するプロフェッショナルビジョントレーナーは2021年末時点で延べ70名が輩出されている。最近では全国の教育機関をはじめ地域行政機関も先進的学問として注目を集める一方、まだまだ人材の不足が続いており、プログラムを実践できるプロトレーナーの育成が求められている。今後の課題は「ビジョントレーニング教室」が地区ごとに建ち、地域で児童支援の実践法として浸透させることである。目下、ビジョントレーニングを広め、プロのトレーナーを増やすことが急がれると語っておられた。

べすとびじょん

このようにFrom Earth Kidsとべすとびじょんは、取組内容こそ異なるものの、根幹にある考え方は同じだと感じた。いずれも昨今新設されたものである。今視えていることはほんの始まりに過ぎない。しかしこれらの施設で現在のびのびと育っている子どもたちの今後の成長に期待が高まる。彼らが将来をつくり、明るく照らす存在になろうと希望が持てた。

子宝を地域で大切に育てる町、大東。ここには子どもたちのあふれる笑顔がある。その背景には、他の地域では例を見ない施設と子どもの未来に真剣に向き合う2人の勇姿があった。

株式会社From Earth Kids


大東市諸福1-12-12
072-872-1801

べすとびじょんすたじお


URL:https://best1vision.com/

大阪産業大学 鈴木雄也研究室 中野礼子